風 2010 ウエダリクオ
僕は、チベットの山奥にあるであろう数億年の時を映しだす湖面になろ うとした。
出来るだけ風の少ない日をえらんで。
空が湖底の翠にとけこみ、雲が流れ、時おり渡り鳥がよぎる。
風が吹き、全てを湖岸に運んでいく。
そしてなにもなかったかのように再び空が広がる。
すべてはすでに用意されていた。
僕は23歳だった。
あてもなく旅し、目的のないことに酔いしれる。
ノルウェーには雪があり
モロッコには砂漠があり
アフガニスタンには山があり
インドには河が流れていた。
無一文でドイツをさまよっていた時、スコットランドの青年ピーターと 出会った。
彼も一文無しだった。
誕生日の日に詩をくれた。
デンマークで風と出会った。
